慶應義塾中等部2021

入試分析

慶應義塾中等部
2021年度

国語

2021年度入試分析

大問数は例年通り5題、小問数は44題とほぼ例年通りのボリュームです。問題の構成は、小説文(約4000字)、随筆文(約2000字)、知識(文学史)、知識(熟語)、漢字の書き取りの順です。大問1の文字数が多く、長く感じましたが特に問題はないでしょう。漢字が15問と昨年より減少したことと、文学史が復活していることが目を引きます。文学史については、かなり古い問題ではありますが、以前出題されたのと同じ形式(平成24・25年など)ですので過去問演習を十分にしてきた受験生は戸惑わずに対処できたのではないでしょうか。大問4の知識事項はパズルのような問題でした。慶応湘南藤沢中等部でパズルのような知識事項の出題が過去にありましたが、冷静に考えられればできる問題です。漢字については、小学校配当の漢字ですが、言葉として思いつきづらいものもたくさんありました。普段から大人向けの文章や新聞などを読むことも大切だといえます。

2021年注目問題


一見面倒くさそうですが、手順を踏んで考えていきましょう。1~8にはいる漢字は「1共」、2「可」、3「然」、4「能」、5「自」、6「続」、7「持」、8「生」です。ここから、漢字を組み合わせて解答を考えます。与えられた文章が「環境」「飢餓」「貧困」などのことばがちりばめられています。そのような世界の中で行動する、ということから「持続可能」という言葉がでてきます。また、前半部分は残りの漢字を組み合わせると、「自然」「共生」という単語を作ることができます。また、知識問題も『側近』『成長株』『直談判』 など、語彙力が試される問題が出題されていますので、語彙の強化も必須です。 国語の問題ではありますが、社会で学習した環境問題などの知識を使うことができれば簡単に思いついたのではないでしょうか。ただし、時間をかけすぎると全体で時間不足になりかねません。過去問などでしっかりと時間配分も練習してください。 また、慶應義塾湘南藤沢中等部でこのようなパズルのような問題が過去に出題されています。慶応受験を考えている場合、自分の受験する学校だけでなく他の学校の問題にも目を通してみるといいでしょう。

過去10年の単元別出題傾向

算数

2021年度入試分析

制限時間45分・配点100点・大問6題・小問20題でした。昨年との大きな違いは「大問が7題から6題へ減少していること」と、「大問2、大問3の小問が1題ずつ増えていること」です。問題難易度は昨年に比べ難しくなった印象です。以下に設問ごとの難易度をまとめました。Aは一般的な基本問題、Bは標準問題、Cは応用問題となっています。

まず、【1】では例年通りの基本的な問題でしたが、【2】の文章題、【3】の図形問題では共に1題ずつ出題数が増えています。いずれも全問正解が必須ですが、時間を掛けずに問題を解くのに必要な条件を整理してください。【4】は速さの問題ですが、これは2009年に出題された問題と同様の解き方となります。【5】の条件整理は、2以上の整数に対して1になるまで「偶数」ならば2で割り、「奇数」ならば3倍して1を加えるという条件での出題です。「コラッツ予想」や「コラッツ数列」などで検索をすると、出てくるでしょう。また、【6】では多角形を○個の三角形に分ける対角線の引き方が出題されていますが、「カタラン数」、「多角形の三角形分割」などで検索をすると、出てくる問題です。初見ではおそらく時間が足りず、解くことが出来ないため、難易度が高い印象です。

2021年注目問題

【4】 速さの問題です。

2009年度にも出題されている問題のため、過去10年分の過去問を演習に使っていた場合、範囲から漏れてしまう可能性があります。しかし、グラフから太郎君と次郎君の間の距離を読み解くことで、それぞれの速さを比の関係で表すことが出来るはずです。そこから、旅人算の考え方を用いることが出来れば十分に対応出来るでしょう。過去10年分の演習にプラスして、さらに数年分を遡って演習することの大切さを教えてくれる一題でした。

過去10年の単元別出題傾向


今回は特に基礎的な知識が試されていたような印象を持ちます。どの単元もまんべんなく出ることを意識し、基礎力の向上に努めてください。

合格のために

慶應義塾中等部の合格を勝ち取るためには
  1. 高度な計算力を身につける。
  2. 基礎力は早目に完成させる。
  3. どの単元も標準レベル以上が解けるように演習を重ねておくこと。
  4. 場合の数や条件整理は頻出のため、複数のパターンに対応出来るように準備をすること。
  5. 過去問演習は過去10年分に加え、プラス数年分を遡り演習を行うこと。

社会

2021年度入試分析

大問数は例年通りの5題に戻りました。また、小問数は2020年度と同様の38題でした。今年度は、「地形図の読み取り」の問題が出題されました。特に地形図の読み取りは、2009年度入試以来、実に13年ぶりのことですので、多くの受験生が戸惑ったのではないでしょうか。また、「歴史年表」を使った問題が大問5題中3題も出題されていますので、今後歴史年表の対策が必要になってくると思われます。以下に設問ごとの難易度をまとめました。Aは一般的な基本問題、Bは標準問題、Cは応用問題をそれぞれ示します。慶應中等部合格のためには、AとBの問題は確実に正解しておかなければなりません。

今年度の社会は、以下の3点が特徴として挙げられます。
  1. 今年度も記述問題が字数指定の問題であること。
  2. 「地形図の読み取り」が13年ぶりに出題されたこと。
  3. 2年連続で「生活知識に関する問題」・「福沢諭吉に関する問題」が出題されこと。
特に、③の「生活知識に関する問題」と「福沢諭吉に関する問題」は2連続で出題されていますので、「生活に関する問題」もしくは「福沢諭吉に関する問題は、来年度も出題されると思われますので、しっかりと対策をしておきましょう。次に、大問毎の問題を見てみましょう。【1】では、「日本の貨幣の歴史」を題材とした会話文が出題されました。設問の後半からは、現行の貨幣を題材としていますので、多くの受験生は戸惑ったのではないでしょうか。特に、紙幣の場合は、歴史人物が描かれている表面は答えられても裏面までは答えられる受験生は少なかったと思われます。また、硬貨のデザインや2024年から発行される新紙幣についても出題されていますので、万遍なく対策をしておきましょう。このように、「生活知識や身近なものを題材にする問題」は、慶應義塾中等部の定番ですので、把握しておきましょう。

2021年注目問題1


この問題は、慶應義塾創設者の福沢諭吉に関係する問題ですので、慶應義塾中等部を志望する生徒であれば、全問正解しておかなければなりません。また、この問題は手前味噌ですが、私の書籍『早稲田・慶應中学の社会偏差値40台からの大逆転合格法』(エール出版・望月裕一著)にも書いており、見事的中しました。 【2】では、「福沢諭吉」に関する年表問題が出題されました。2020年度では、設問の中に福沢諭吉の問題がありましたが、今年度では福沢諭吉の問題を大問1題分として出題されています。これは、実に14年ぶりです。今回の問題では、福沢諭吉の生い立ちを年表にしていますが、やはり慶應義塾中等部を志望されるのであれば、【1】の問題同様、知っておかなければならない内容です。

2021年注目問題2


【3】では、「地形図の読み取り」が出題されました。上記でも記載した通り、地形図の読み取りが2009年度以来、13年ぶりに出題されました。今回の地図は等高線が多く、目印となるものが少ないため細部まで読み取るのに時間を多く費やしたことと思いますが、設問数は3問で、しかも難易度は全て標準レベルですから、落ち着いて焦らず解ければ必ず解ける内容です。【4】では、「感染症の歴史」を題材とした年表問題が出題されました。全体的に日本ではなく、世界でおこった感染症をもとに設問が作られていますので、一部世界史や世界地理の要素が含まれています。また、問10の⑵では、日本でスペイン風邪が流行した頃に感染予防を呼びかけたポスターから□に入る言葉を答えさせる問題は、ポスターに描かれている絵を見れば、解ける内容ですので難しくはありません。【5】では、「日本の地震の歴史」を題材とした年表問題が出題されました。中でも問1の「関東大震災で火災による家屋の焼失が多かった理由」を15字以上25字以内で記述させる問題、問5の「東京都内の私立小学・中学・高等学校が、震災発生時にその学校だけでなく他の私立学校の生徒の避難も一時的に受け入れる約束を結んだ理由」を20字以上50字以内で記述させる問題が出題されました。長文記述の問題は2018年度入試から4年連続で出題されていますので、しっかりと対策をしていなければ解けない問題です。まず、この問題を初見で見た時に、多くの受験生は残り時間から逆算して、どのくらいの時間を費やせるのかを考えて解いたのではないでしょうか。ですが、問われている内容は難しくはありませんので、必ず何かしら書くこと重要です。今年度の問題は、例年のような最後に「解答欄の枠内おさまる程度で述べなさい。解答する時には、解答欄からはみ出さないように気をつけましょう。」という決まりがなく、全て時数指定で記述させていますので、文章を要約する力が必要です。

過去10年の単元別出題傾向


慶應義塾中等部の公民は、日本国憲法と統治分野(国会・内閣・裁判所)の出題割合が高いです。特に国会とは、過去に3年連続で50字前後の記述の問題が出題されています。特に2021年は、必ず衆議院議員総選挙が行われますので、2022年度入試では出題される割合が非常に高いです。国会や選挙が苦手な場合は、早期に対策をしましょう。

合格のために

慶應義塾中等部の合格へのカギは、どの分野においても満遍なく対策をすることや日頃からさまざまなことに意識しておくことです。今年度で言えば、「現在使用している貨幣」や「震災発生時に他の私立学校の生徒の避難も一時的に受け入れる約束を結んだ理由」を答えさせる問題などです。今、日本や世界でおきている問題をあなた自身どう思うのかを慶應義塾中等部は求めています。こういった問題は、机上の勉強で身につくものではありません。塾のテキストに頼った勉強方法では合格点を稼ぐことは出来ないといえるでしょう。そして、今年度では出題されなかった「日常生活に関する問題」を実際に体験することも必要です。ご家庭内で日本の風習や習慣をお子様に教えてあげることに加えて、専門の対策ができる個別指導での学習が必要であると思われます。

理科

2021年度入試分析

今年度は大問数が5題。小問は22。大問数は例年通りに戻ったかたちです。設問数も例年とほぼ変わりませんでした。出題形式はほとんどが選択問題ですが,用語記入の出題が3箇所あり,また昨年までなかった記述解答形式の設問が1つ出題されました。出題内容で難問はありませんでしたが,問題文からの情報を整理する力が要求されました。しかし,今年も「ミスなく,素早く,確実に」解く必要があることは変わっていません。以下に設問ごとの難易度を示します。Aは一般的な基本問題,Bは標準問題,Cは応用問題です。

【1】は「月」の問題。基礎的な問題でしたが,(1)は満ち欠けの形に合わせ,月面の模様の角度を注意深く考える必要がある問題で,雑に扱うとミスをしかねない問題でした。【2】は「複合問題」。設問は,物質の性質や状態変化,露点などからなっていました。炭酸水素ナトリウムではなくベーキングパウダーと問題文で表記されている点は“慶應らしい”問題といえるでしょう。【3】は「動物」についての問題でした。動物の骨格の設問と奇蹄目の設問は,知識のあるなしで差がついた問題だったと思います。【4】は「水溶液の性質」。問題文を整理しながら丁寧に読み解くことが,正解へのカギとなりました。また,紫キャベツ液の色の変化が,お勉強してきたテキストによっては違っていたという受験生もいたはずです。これも冷静に対処できなければなりませんでした。【5】は「植物」の問題でした。樹木の葉の形,樹木のシルエットなど以前出題された形式と同じ設問もありましたので,準備できていた受験生は多かったはずです。

2021年注目問題


過去10年の単元別出題傾向


生物,天体などやや偏りが見られるものも,全ての範囲でていねいな学習しましょう。難度の高い問題は少なく,短い試験時間の中で正しい知識を素早く使えることが求められます。観察や実験を含む問題が多く出題されます。

合格のために

これまで見てきた通り,慶應中等部の合格を勝ち取るためには
  1. 基本的な知識は素早く確実に使えるようにすること。
  2. 問題文や図,グラフを読み取る力を養成すること。
  3. 身の回りの現象に興味を持つこと。
生活の中やニュースなどで見られる現象に普段から関心を持てているかを求められています。周りの環境や自分がどんなものを食べているかなどに目を向け,調べるようにすることが大切です。
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